前立腺肥大症通信 No.3

治療技術が進化!低侵襲なレーザー手術で
治療時の出血や痛みが少なく、短期間の入院に!

ペットの犬も前立腺肥大症!さてその治療法は?

人間のみならず、犬の社会でも高齢化が進んでいます。昔に比べて長生きできるようになった結果、犬も前立腺肥大症になるケースが増加しています。前立腺肥大症になった犬には、人間同様、排尿障害や血尿の症状が起こります。
自覚症状を訴える事のできない犬は、前立腺肥大症が進行してしまい、感染症や膿症といった症状にまで至るケースが多くみられます。その場合の治療は人間以上に困難だとのこと。
犬には精巣を除去する去勢手術を施すことが多いのですが、これは、前立腺の肥大化に影響を与えるホルモンを抑制し、肥大を縮小させるという効果もあります。去勢は「ちょっと、かわいそう」とも思いますが、犬の場合はむしろ安全・確実な治療法とされているようです。 

開腹せずに治療できる手術が主流へ

今回からは、前立腺肥大症の治療法についてご説明します。前立腺肥大症と判断され、患者さんのQOLに悪影響を与えると判断された場合に選択される「内視鏡下で行う手術」についてご紹介します。

1. 電気メスを使った前立腺肥大の治療法“TURP”
現代医学の進化の中で、大きな役割を果たしている機器の一つが内視鏡です。経尿道的前立腺切除術(TURP)という手術方法は、内視鏡と高周波電流による電気メスを組み合わせた機器を使用する治療法です。内視鏡を尿道から前立腺まで挿入し、先端の電気メスで前立腺の内側(尿道の内側)から肥大した腺腫(内腺)を少しずつ削ります。その後、膀胱内に落ちた、削られた腺腫の切片を吸引して回収します。

2. 肥大が大きくなりすぎた場合は開腹手術で
「TURPでの治療は困難」と判断された患者さんの治療には、メスで腹部を切開して行う開腹手術が選択される場合もあります。
また、合併症などで、TURPも開腹手術も難しい状況の患者さんには、「ステント留置術」という治療法があります。このステント留置術は、尿道を広げるための「金属ステント」というコイル状の機器を尿路に挿入する方法です。
 

進化する前立腺肥大症の低侵襲治療
メスを使わない最先端のレーザー手術法

1. “HoLEP”(ホーレップ)とは
レーザー光を利用した治療は出血や痛みが少ないため、患者さんに負担の少ない手術を可能にしています。“HoLEP”という最新の手術方法は、内視鏡を尿道から前立腺に通し、レーザーファイバーと呼ばれる機器を前立腺の内側(内腺)と外側(外腺)の境目に挿入して行います。このレーザーファイバーでホルミウムヤグレーザーという種類のレーザー光を照射し、肥大した内腺(腺腫)を外腺から切り離(核出)します。腺腫を核出し、尿道を広げた後、別の機器で膀胱内へ移動した腺腫を細切・吸引しながら摘出します。この“HoLEP”による治療法は、TURPに比べて出血量を少なくすることが可能です。また、入院期間や完治までの期間も短く、低侵襲な治療法として注目され始めています。

HoLEPとTURPの違い~治療のイメージ比較 

2. “HoLAP”(ホーラップ)とは
ホルミウムヤグレーザーによる“HoLAP”という治療法もあります。尿路に通したレーザーファイバーにより、前立腺組織そのものにレーザー光を照射する方法です。肥大した前立腺の腺腫を蒸発させるようにレーザー光で蒸散させ、縮小させていく方法です。
“HoLAP”はさらに低侵襲な治療法で、日帰り手術も可能です。

監修:
国際親善総合病院 院長
村井 勝先生