ICDと植込み後の生活

• 何か質問がある場合や、ICDに関して普通とは異なる状態に気が付いた場合は、担当医師にご相談ください。

• 担当医師から指示され、処方された治療薬を内服してください。

• 患者手帳と治療薬のリストなどを常時携帯してください。

• ICDを装着していることをかかりつけの医師、歯科医師、救急医療スタッフ等に伝えてください。

• 病院名／診療科
• 所在地／電話番号
• 担当医師名
• 植込み医師名
• 治療薬（リスト）

1. まず落ち着き、どこか座れる場所か横になれる場所を探します。
2. 可能であれば、必要な場合に心肺蘇生術（CPR）を行える人にそばに居てもらってください。
3. 1分以上意識がない場合に救急車を呼んでもらうようご家族や友人に頼んでおきましょう。
4. ショック治療の後に意識はあるが気分が悪くなった場合は、誰かに頼んで担当医師に連絡してもらいましょう。
5. ショック治療の後に症状が改善し、それ以上症状が出ない場合は、直ぐに医師の診察を受ける必要はないかもしれません。連絡すべき場合については担当医師の指示に従ってください。退院前などに担当医師にこれらのときの行動について相談してください。担当医師やスタッフから以下のような質問をされると思います。
   • ショックの直前に何をしていましたか？
   • ショックの前に何か気が付いた症状はありますか?
   • ショックが起こった時刻はいつですか？
   • ショックの直後にどのような感じでしたか？

ICDは心臓の調律を常に監視し、不整脈を検出すると心臓に治療を施します。ICDは一人ひとりの症状にあわせて担当医師によりプログラムされています。行われる治療の種類といつ行われるかは、プログラムされた設定に基づいています。

抗頻拍ペーシング（ATP）： 拍動が速く規則的な不整脈の場合、小さな速いペーシングパルスを送り不整脈を止めます。その結果、心臓が正常な調律に戻ります。ペーシング治療を全く感じなかったり、胸が少しどきどきする程度に感じることがあります。ほとんどの場合、このペーシング療法は痛みを伴いません。

カーディオバージョン： 拍動が非常に速く規則的な不整脈の場合、低度から中程度のエネルギーショックを送り不整脈を止めます。その結果、心臓が正常な調律に戻ります。多くの場合、カーディオバージョンは中程度の不快感を伴い、一瞬胸を強く叩かれているような感じがします。

除細動： 拍動が非常に不規則で速い不整脈の場合、高エネルギーのショックにより不整脈を止めます。その結果、心臓は正常な調律に戻ります。多くの場合、非常に速いVT またはVF 調律が始まると失神したり意識がもうろうとするため、多くの患者さんは高エネルギーショックを感じません。この突然の一瞬のショックを「胸の中を蹴り飛ばされたようなショック」と感じる人もいます。この感じは瞬間的です。多くの患者さんは、このショックで救命された安心感を得ることと思いますが、一方で、ショック治療の後、少しあわてるかもしれません。

徐脈ペーシング： 心臓が出す電気信号が遅すぎる場合、ICDは心臓をペーシングします。心房や心室に信号を送り、全身に必要な血液を送れるよう収縮の頻度を高めます。その結果、心臓自体のペースメーカが回復するようになるまで心拍が保たれます。通常、心臓のペーシングに使われる電気パルスを感じることはありません。

意識消失の危険性があなたや他の人に及ぶような活動を避けるように、指示があるかもしれません。運転、水泳、単独でのボート操舵、またははしごに登ることなどは避けたほうがいいかもしれません。

車の運転
道路交通法の「運転免許の欠格事由」を参照してください。不明な点は、担当医師に相談してください。

性生活
多くの患者さんが性生活に関しても不安を抱きますが、ほとんどの場合、医学的には問題がありません。性交渉の際の自然な心拍の増加は、運動時のそれと同様です。担当医師は運動負荷検査や他のデータに基づきICDシステムの設定を決めているので、性交渉の間にショック治療を感じることはないでしょう。ショック治療が行われた際には、あなたのパートナーはちょっとしたピリピリ感を感じるかもしれません。これは、ICDシステムからのショックエネルギーがあなたの皮膚を通り抜け、他の人に伝わることにより起こりますが、害はありません。このような場合、システム再プログラムの考慮も可能かもしれませんので、まずは担当医師にご相談ください。

担当医師に連絡すべき場合
連絡すべき場合を定めた指針が担当医師より示されると思います。一般的に、次のような場合は担当医師に電話してください。

• ICDにより不整脈治療が行われ、その場合には電話するよう指示されている場合。

• 異常な心調律の症状があり、そのような場合には電話するよう指示されている場合。

• 切開創部が赤く腫れたり体液が滲み出ていることに気が付いた場合。

• 発熱があり2､3日以内に熱が下がらない場合。

• ICD、心調律、薬物治療について不明点がある場合。

• 旅行や引越しの予定がある場合。

• ICDからビープ音がする（「ピィーッ」と音が鳴る）場合。これはICDを直ぐに点検する必要があることを知らせる合図です。

• 今までなかった症状や、ICDを植込む前にあった症状など、通常とは異なる状態や予期しなかった状態に気が付いた場合。

ICDは致死的不整脈を監視して治療する役目を担っています。あなたご自身だけでなくご家族や友人にとっても大きな安心の源であると言えます。

退院後の定期検診
担当医師は退院後の定期検診の予定を立てると思います。体調が良い場合でもきちんと検診を受けることが大切です。ICDには多くの変更可能な機能があり、検診の際に担当医師は個々の症状にあわせてICDをプログラムすることができます。
ICDを検査するため、担当医師はプログラマを使います。プログラマは特別なコンピュータで、胸もしくは腹部にあてたワンドを介してICDとの間で交信します。
一般的に、定期検診は約20分かかります。検診の際に、担当医師はプログラマを使いICDをチェックします。メモリを確認して前回の診察以降の性能を評価し、不整脈が起こっていたかどうかをチェックします。必要な場合は、プログラム設定を調整します。また、電池の状態をチェックします。

ICDの電池について知っておくべき事柄
ICDの中に安全に密封された電池は、心調律の監視、心臓のペーシング、ショック治療に必要なエネルギーを供給します。他のあらゆる種類の電池と同様、ICDの電池は年月の経過と共に消耗します。電池が消耗した場合には、ICDを交換する必要があります。電池の寿命は、担当医師がプログラムする設定やショック治療の回数によって異なります。

ICDの電池が減ってきたことを知るには？
ICDは、年月の経過による電池残量を予測できる性能をもっています。ICDは定期的に電池をチェックします。また、定期検診の際に毎回、担当医師は残っている電池の量をチェックします。電池の量が一定レベルまで下がった場合には、ICDを交換する必要があります。
担当医師は、交換時期が近づいた場合にICDからビープ音（「ピィッ、ピィッ…」と音が鳴る）を鳴らす機能をオンにすることができます。

ICDからビープ音が鳴ったらどのようにすればよいか?
担当医師に状態を知らせる必要がある場合、6時間ごとに16回ビープ音が鳴ります。ICDからビープ音が鳴ったら直ぐに担当医師に連絡してください。担当医師や看護師よりビープ音の意味の説明を受けてください。