放射線治療

放射線治療は、目に見えない高エネルギーのⅩ線、粒子線などを用いてがん細胞の遺伝子を破壊し、がんの増殖を抑えたり死滅させたりします。外照射療法と組織内照射療法の2つに大別されます。年齢を問わず治療が受けられ、ほとんどの病期が放射線治療の対象となります。
限局性のがんにおいては、手術と同等の成績で根治が期待できます。
日本人は、前立腺と直腸の間の脂肪が少なく、ほぼ接している状態が多いです。したがって、前立腺へ照射の際に、放射線の感受性の高い直腸粘膜が高い線量の放射線を受けやすく、頻便や直腸出血などの直腸障害が生じることがあります。
 
 
 

外照射療法

 
 3D-CRT(3次元原体照射法)
治療範囲を3次元のCT(コンピュータ断層撮影)の情報に基づいて、対象臓器の形に絞り込みⅩ線を照射します。
通常、36~40回(5日間/週で7~8週間)程度の照射を行います。1回の照射時間は15分程度と短く、通院で治療を行えます。
3D-CRT(3次元原体照射法)
 
 IMRT(強度変調放射線療法)
3D-CRTをさらに進化させたもので、より精度の高い治療が行えます。部位により放射線の強度を変えることができるようになったため、強く当てたいところと、弱くしたいところを調整しながら照射します。その中で、回転式のものをVMAT(強度変調回転放射線治療)といいます。
IMRT(強度変調放射線療法)
 
 SBRT(体幹部定位照射療法)
照射技術はIMRTと同様ですが、通常の放射線照射と比べて1回の照射線量をあげ、照射回数を減らします。そのため、治療期間は1週間(照射5回)と短くなります。欧米では、良好な結果が報告されていますが、10年以上の長期成績は不明です。
 
 粒子線療法(陽子線療法、重粒子線療法)
Ⅹ線は照射された皮膚近くで最もエネルギーが高くなり、体内へ進むにつれて弱くなっていきます。粒子線は、ある位置でエネルギーが最大になる性質があるため、目的のがん組織の位置で最大になるよう調整することが可能です。そのため、他の臓器への影響が少なくできるといえます。ただし、大掛かりな装置が必要であり、通常の施設では設置できず、場所によっては気軽に通院することができません。
治療直後に、排尿痛、頻尿などの排尿障害、便意切迫などの合併症が時々起こります。手術治療後のような尿失禁が生じないのが長所です。晩期の合併症として、血尿、血便、頻尿、性機能障害が起こることがあります。
 

組織内照射療法

外照射に比べて合併症が起こりにくいのが特長です。治療直後は、頻尿や排尿障害が起こりや すくなりますが、通常1~2か月で治まります。晩期の合併症としては肛門からの出血や性機能障害が起こることもあります。
 
 LDR(密封小線源永久挿入療法)
放射線をだす線源を前立腺の中に入れて組織内から照射する方法です。がんのすぐ近くに線源を置くことで、高い線量を照射することができます。線源は永久留置することになりますが、放射線の線量は徐々に減っていき1年後にはほとんど照射されなくなります。
 
 HDR(高線量率組織内照射)
前立腺に針を刺し、針に線源を通して高い線量を短時間だけ照射します。数回に分けて照射することが多く、針が刺さっている間は安静が必要となります。多くの場合で、外照射を併用します。