2021-2-15

独自の薬剤コーティング技術を搭載した大腿膝窩動脈用薬剤コーティングバルーン「Ranger™」薬事承認取得
~低用量の薬剤で病変部に効率的に到達し患者様への安全性向上に期待~

ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社(本社:東京都中野区、代表取締役社長:スティーブン・モース)は、2021年2月8日、大腿膝窩動脈用薬剤コーティングバルーン「Ranger™」の薬剤承認を取得しましたことをご報告いたします。2018年に薬事承認を取得した薬剤溶出型ステント「ELUVIA™」を含めると、Drug-Eluting Technology(薬剤溶出テクノロジー)を用いたステント*とバルーンカテーテル**両者を併せ持つ国内で唯一の企業となり、患者様に治療の選択肢を幅広くご提供できることとなりました。
Ranger™薬剤コーティングバルーンは、末梢血管疾患(PAD)治療の一つである血管内治療において、浅大腿動脈及び大腿膝窩動脈領域に発生した狭窄病変に対し、血管内腔の長期開存を目的として使用されます。
Ranger™は、ボストン・サイエンティフィック独自のトランスパックステクノロジーにより、薬剤(パクリタキセル)がバルーン表面にコーティングされています。病変部まで薬剤を到達させ、血管壁に浸透させることで再狭窄の抑制効果が期待されています。また、独自のローディングツール(コーティング保護カバー)を搭載し、末梢血管への薬剤粒子ロスを低減させるように設計されています。*1,2 これらにより、Ranger™は「再狭窄・再治療」という患者様への負担やQOL低下を低減することに寄与いたします。
さらに、0.018インチ以下のガイドワイヤ対応及び最長で200ミリのバルーン有効長を備える幅広いサイズバリエーションで、術者にとって扱いやすいデリバリーシステムを採用しています。また、5フレンチシース対応であることで手技の負担軽減を提供し、患者様に対しては低侵襲な治療を提供いたします。
*ステント…狭くなった血管を内側から持続的に広げ、血流をよくするために使う筒状の器具
**バルーンカテーテル…狭くなった血管を内側から広げ、血流をよくするために使う風船状の器具



販売名:レンジャー薬剤コーティングバルーンカテーテル

■国際共同治験RANGER ll SFA臨床試験(RANGER RCT)のご紹介*3

RANGER RCTは、国際共同ランダム化比較対照(Ranger DCBと標準的PTAのランダム化比率3:1)試験であり、病変長180mm以下(目視)の自己SFA/PPA病変を有する患者を対象として、対照群の標準的PTAに対するRANGER DCBの有効性及び安全性を評価しました。有効性の主要評価項目は手技12カ月後の一次開存***率とし、標準的PTAに対するRanger DCBの優越性を検証しました。安全性の主要評価項目は手技後12カ月間の重大な有害事象(MAE)****非発現率とし、標準的PTAに対するRanger DCBの非劣性を検証しました。
RANGER RCTには、日本、アメリカ、ヨーロッパ、ニュージーランド、カナダの67医療機関から376例(Ranger DCB群: 278例、標準的PTA群: 98例)が登録されました。
全登録症例における、有効性主要評価項目である手技12カ月後の一次開存率は、Ranger DCB群で82.9%であったのに対し、標準的PTA群では66.3%であり、標準的PTAに対するRanger DCBの優越性が示されました(p=0.0017)。また、カプランマイヤー推定法に基づく手技12カ月後の一次開存率は、Ranger DCB群で89.8%、標準的PTA群で74.0%でした(Log-rank p=0.0005)。
一方、安全性主要評価項目である手技後12カ月間のMAE非発現率は、Ranger DCB群で94.1%、標準的PTA群で83.5%であり、標準的PTAに対するRanger DCBの非劣性が示されました(非劣性p<0.0001)。また、カプランマイヤー推定法に基づく手技12カ月後の死亡率に関しては、Ranger DCB群 1.9%、標準的 PTA群 2.1%であり、両群間において有意差はありませんでした(Log-rank p=0.8794)。

***一次開存:duplex超音波検査で評価した収縮期最大血流速度比(PSVR)が2.4以下であり(コアラボによる評価)、臨床症状に由来する標的病変再血行再建術(clinically-driven TLR)が行われていない場合
****重大な有害事象(MAE):治験手技後1カ月間の全死亡、治験手技後12カ月間の標的肢大切断術及び治験手技後12カ月間の標的病変再血行再建術(TLR)

■末梢動脈疾患(PAD)について

末梢動脈疾患(PAD)は、動脈硬化により足や手などの血管が詰まる疾患で、糖尿病や高脂血症、高血圧といった疾患と強い因果関係があります。はじめは無症状ですが、次第に痛みや腫れが起き、生活の質(QOL)の低下をもたらします。血流が再開・維持されず、重症化すると患肢の切断に至る場合もあります。運動機能に影響を与えることから、生活習慣病をさらに悪化させ、心筋梗塞などを引き起こすリスクもあります。患者数は年々増加し、国内の潜在患者数は約300~400万人と推測されており*4、特に、腎不全など他の疾患を併発した複雑病変の方が多いといわれています。治療には運動療法や薬物療法もありますが、さらに改善が求められる場合には、バルーンカテーテルによる拡張やステント留置が行われますが、手術後にも再狭窄、再閉塞が起きるリスクが高く、再治療が必要となることが課題とされています。症状が重症化した場合には、外科的なバイパス手術が行われることもあります。

(出典)
*1:Carlos A. Gongora, et al. Impact of Paclitaxel Dose on Tissue Pharmacokinetics and Vascular Healing. JACC Cardiovascular Interventions,2015 8(8):1115-23.
*2: Boitet A., et al., An Experimental Study of Paclitaxel Embolisation During Drug Coated Balloon Angioplasty, Eur J Vasc Endovasc Surg, 2019 Apr;57(4):578-586.
*3: Brodmann M, LINC 2020.
*4:Iida, O et al. Timing of the restenosis following nitinol stenting in the superficial femoral artery and the factors associated with early and late restenosis. Catheterization and Cardiovascular Interventions, 2011; 78: 611-617.

<ボストン・サイエンティフィックについて>

ボストン・サイエンティフィックは、低侵襲治療(インターベンション)に特化した医療機器メーカーとして、1979年に米国で誕生しました。現在の取扱製品は13,000種以上であり、グローバルで約29,000名の従業員、13ヵ所の製造拠点を擁し、125ヵ国近くのマーケットで確固たる地位を誇る世界最大級の医療機器メーカーとして、医療テクノロジーをリードし続けています。

世界第2位の医療機器市場である日本においては、不整脈・心不全疾患領域、末梢血管疾患、消化器疾患、泌尿器疾患、婦人科疾患領域、疼痛管理・パーキンソン病の治療領域で、患者さんの人生を実り多いものにすることに全力で取り組み、日本の医療に意義のあるイノベーションを起こしていきます。

企業サイト:http://www.bostonscientific.jp

 
販売名:レンジャー薬剤コーティングバルーンカテーテル
医療機器承認番号:30300BZX00033000

販売名 : エルビア薬剤溶出型末梢血管用ステント
医療機器承認番号 : 23000BZX00374000