HINODE study
データ寄贈式
不整脈診療と研究のさらなる向上のために
HINODE試験のデータを日本不整脈心電学会に寄贈
清水 渉 先生 | 日本不整脈心電学会 理事長 |
栗田 隆志 先生 | 日本不整脈心電学会 副理事長 |
野田 崇 先生 | 日本不整脈心電学会 理事 |
青沼 和隆 先生 | 水戸済生会総合病院 循環器内科 最高技術顧問、HINODE Study 研究責任者 |
森川 智之 ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社 代表取締役社長 |
Kenneth Stein Sr. Vice President, CRM Chief Medical Officer, Boston Scientific Corporation |
Torsten Kayser Sr. Fellow Clinical, Senior Fellow, Boston Scientific Corporation |
HINODE試験への資金の提供は、本試験が日本およびアジア各国の先生方に心臓突然死のリスクを再認識してもらううえで重要であるからです。我々は地域の臨床研究への資金提供を継続するだけでなく、国際的な臨床研究に日本の被験者を登録してもらう取り組みも行っています。この一環としてAPPRAISE ATP試験について触れたいと思います。同試験はAnti-Tachy心臓ペーシングの有用性を検討する無作為化試験であり、日本と韓国の大規模なコホートを含む一次予防患者を対象にしています。同試験にご協力いただいている日本の研究者に深く感謝しており、試験結果を米国ハートリズム学会(HRS)に提出することで非常に重要かつ有用なものになると信じています。
*マッチングした群におけるp値>0.05の場合(層別log-rank検定)、**p値=0.002の場合( log-rank検定)、***p値=0.005( log-rank検定)の場合
心筋梗塞後に左心室機能が低下した患者における心臓突然死の一次予防の有効性はMADIT II試験で証明されました2)が、日本人を含むアジア人においては予後がそれほど悪くない可能性が示唆されました3)。DANISH試験では非虚血性心疾患の患者における心臓突然死の一次予防の有無により総死亡率に有意差が見られなかった4)ことでICDやCRT-Dの一次予防への効果に疑問が持たれていました。そうした中で、青沼先生を中心に進められた日本の臨床データに基づく観察研究であるHINODE試験は非常に意義深い研究です。この重要なデータを患者さんのために役立てたいと考えています。
本試験ではPatient Management SystemであるLATITUDEや電子データ収集システムから多量のデータが抽出され、心電図のraw data、心室イベントおよび心不全イベントの心電図に関する評価結果についても重要な判断基準が収集されています。将来的に他のデータセットと統合して拡張されることで、さらなる研究が可能となるでしょう。このような影響力のある研究に関与できることを嬉しく思います。
HINODE試験のデータをJHRSに寄贈することで、野田先生をはじめとする研究者による新たな分析が促進され、日本独自の洞察が提供されることを期待しています。三橋武司先生のJID CAD試験や栗田先生のNIPPON Storm試験などからも、日本における突然死の発生率は決して低くないことが明らかになっています5,6)。ICD植込みのガイドラインが欧米よりも控えめである現状を踏まえ、新しいガイドラインを推進するためにもHINODE試験の成果が活かされることが重要です。
心不全専門医も心不全患者の心臓突然死による死亡率の高さを実感しており、日本心不全学会も多くのデータを収集しています。HINODE試験のデータは不整脈専門医のみならず、心不全や虚血性心疾患の専門医にも共有されるべき重要なものです。日本における虚血性心疾患による突然死は多くないという一般的な認識に疑問を呈した本データが学会を通じて共有されることが重要です。学会間でのセッションを通じて、虚血性心疾患や心不全の専門医にICDやCRT-Dの重要性を啓発することが必要と考えます。
HINODE試験の顕著な特徴は心不全専門医が研究者として積極的に参加している点であり、不整脈専門医のみならず、心不全専門医も含めた多職種の協力が得られていることを意味しています。心不全専門医が新たな認識を深めていることは、この分野の知見を広げる上で重要です。日本心不全学会の重要なメンバーが参加していることが本試験の重要性をさらに高めているのであり、これからも日本心不全学会との協力やコラボレーションを進めることは有益だと思われます。
今後とも学会主導で新たな前向きな臨床研究が開始されることが望まれます。野田先生ら若手の研究者が主導することを期待しており、JCDTRを超える新たな研究が生み出されることを願っています。
1. Aonuma K, et al. Primary results from the Japanese Heart Failure and Sudden Cardiac Death Prevention Trial (HINODE). ESC Heart Failure 2022.
2. Moss AJ, et al. Prophylactic implantation of a defibrillator in patients with myocardial infarction and reduced ejection fraction. N Engl J Med 2002; 346: 877-83.
3. Tanno K, et al. Are the MADIT II criteria for ICD implantation appropriate for Japanese patients? Circ J. 2005; 69: 19-22.
4. Køber L, et al. Defibrillator Implantation in Patients with Nonischemic Systolic Heart Failure. N Engl J 2016; 375: 1221-30.
5. Kabutoya T, Mitsuhashi et T, et al. Prognosis of Japanese Patients With Coronary Artery Disease Who Underwent Implantable Cardioverter Defibrillator Implantation - The JID-CAD Study. Circ Rep 2021; 3: 69-76.
6. Kondo Y, Kurita T, et al. Comparison of 2-year outcomes between primary and secondary prophylactic use of defibrillators in patients with coronary artery disease: A prospective propensity score-matched analysis from the Nippon Storm Study. Heart Rhythm O2 2021; 2:5-11.
2. Moss AJ, et al. Prophylactic implantation of a defibrillator in patients with myocardial infarction and reduced ejection fraction. N Engl J Med 2002; 346: 877-83.
3. Tanno K, et al. Are the MADIT II criteria for ICD implantation appropriate for Japanese patients? Circ J. 2005; 69: 19-22.
4. Køber L, et al. Defibrillator Implantation in Patients with Nonischemic Systolic Heart Failure. N Engl J 2016; 375: 1221-30.
5. Kabutoya T, Mitsuhashi et T, et al. Prognosis of Japanese Patients With Coronary Artery Disease Who Underwent Implantable Cardioverter Defibrillator Implantation - The JID-CAD Study. Circ Rep 2021; 3: 69-76.
6. Kondo Y, Kurita T, et al. Comparison of 2-year outcomes between primary and secondary prophylactic use of defibrillators in patients with coronary artery disease: A prospective propensity score-matched analysis from the Nippon Storm Study. Heart Rhythm O2 2021; 2:5-11.
承認番号:30100BZX00170000