HINODE study
データ寄贈式


不整脈診療と研究のさらなる向上のために
HINODE試験のデータを日本不整脈心電学会に寄贈

左から森川、Kayser、青沼先生、Stein、清水先生、栗田先生、野田先生、Torri Schwartz (Analyst, Sr Clinical Database/Biostatistics Boston Scientific Corporation)、Martin Baker(ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社 カーディオロジー統括事業本部長)
  
清水 渉 先生日本不整脈心電学会 理事長
栗田 隆志 先生日本不整脈心電学会 副理事長
野田 崇 先生日本不整脈心電学会 理事
青沼 和隆 先生水戸済生会総合病院 循環器内科 最高技術顧問、HINODE Study 研究責任者
森川 智之
ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社 代表取締役社長
Kenneth Stein
Sr. Vice President, CRM Chief Medical Officer, Boston Scientific Corporation
Torsten Kayser
Sr. Fellow Clinical, Senior Fellow, Boston Scientific Corporation
 
2022年にESC Heart Failureに掲載された日本発のHINODE試験(Heart Failure Indication and Sudden Cardiac Death Prevention Trial Japan)では、プロペンシティスコアマッチングによりHINODE試験のHV(High-Voltage)群とMADIT-RIT試験の(B+C)群をマッチングした場合、死亡率およびVA(Ventricular Arrhythmia)回避率が同等であることが示されました。これは一次予防を目的に植込み型除細動器(ICD)や両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)を植込んだ日本人の死亡率およびVA回避率が、これまで発表された欧米人を対象とした無作為化試験の結果と同等であることが示唆されています(表1, 図1)1)。このHINODE試験は、日本におけるICDやCRT-Dの一次予防への効果についてのこれまでの認識に大きな変化をもたらしています。HINODE試験のデータはこのたび、不整脈診療のさらなる向上のために日本不整脈心電学会(JHRS)に寄贈されました。2024年3月9日に行われたデータ寄贈式の模様を紹介します。
 
森川 我々ボストン・サイエンティフィックは今日この日を心待ちにしておりました。2016年に開始されたHINODE試験は日本が直面している超高齢化社会の課題に対して貴重なデータを提供しています。このデータが活用され、JHRS学会が保有するデータと組み合わせることで、日本の患者さんによりよい治療が提供されることが期待されます。本試験のような取り組みに貢献できることは光栄なことであり、引き続き、先生方と共に目標に向かって進んでいく所存です。
Stein ボストン・サイエンティフィックはこれまでにも心臓突然死を防ぐための植え込みデバイスについてMADIT試験シリーズ、PRAETORIAN試験、UNTOUCHED試験などを実施しています(図2)。ただ、これらの試験が主に欧米人を対象に行われてきたことで、日本やアジアの臨床の先生方の中ではこれらのデータがアジア人にも適用できるのかが議論されてきました。
HINODE試験への資金の提供は、本試験が日本およびアジア各国の先生方に心臓突然死のリスクを再認識してもらううえで重要であるからです。我々は地域の臨床研究への資金提供を継続するだけでなく、国際的な臨床研究に日本の被験者を登録してもらう取り組みも行っています。この一環としてAPPRAISE ATP試験について触れたいと思います。同試験はAnti-Tachy心臓ペーシングの有用性を検討する無作為化試験であり、日本と韓国の大規模なコホートを含む一次予防患者を対象にしています。同試験にご協力いただいている日本の研究者に深く感謝しており、試験結果を米国ハートリズム学会(HRS)に提出することで非常に重要かつ有用なものになると信じています。
表1 HINODE試験におけるICD群および CRT-D群のエンドポイント結果を、マッチング群および非マッチング群のMADIT-RIT試験結果と比較
*マッチングした群におけるp値>0.05の場合(層別log-rank検定)、**p値=0.002の場合( log-rank検定)、***p値=0.005( log-rank検定)の場合
図1 HINODE試験のHV群とMADIT-RIT試験(B+C)群の比較:死亡率および適切に治療された患者のVA発生率
図1 HINODE試験のHV群とMADIT-RIT試験(B+C)群の比較:死亡率および適切に治療された患者のVA発生率
清水先生 HINODE試験のraw dataをJHRSに寄贈していただいたことに対し、ボストン・サイエンティフィックに心から感謝申し上げます。MADIT試験を始めとする臨床研究においてボストン・サイエンティフィックからは厚い支援を提供していただきました。MADIT試験は1996年に米国のロチェスター大学のArthur J. Moss教授によって主導されました。先生とは40年近い親交がありました。Moss先生はQT延長症候群のレジストリも手がけており、彼からボストン・サイエンティフィックがICDデバイスのレジストリにも携わっていると聞き、同社が臨床研究に深い理解を示していることを強く感じました。
心筋梗塞後に左心室機能が低下した患者における心臓突然死の一次予防の有効性はMADIT II試験で証明されました2)が、日本人を含むアジア人においては予後がそれほど悪くない可能性が示唆されました3)。DANISH試験では非虚血性心疾患の患者における心臓突然死の一次予防の有無により総死亡率に有意差が見られなかった4)ことでICDやCRT-Dの一次予防への効果に疑問が持たれていました。そうした中で、青沼先生を中心に進められた日本の臨床データに基づく観察研究であるHINODE試験は非常に意義深い研究です。この重要なデータを患者さんのために役立てたいと考えています。
Kayser HINODE試験に携わった皆様から提供された高品質なデータに敬意を表します。私はこれまでにすべての患者情報を完全に保持した研究に出会ったことはありませんでした。本試験の成果は研究者の皆様の膨大な努力によるものであり、提供されたデータの価値が高いことが示されています。
本試験ではPatient Management SystemであるLATITUDEや電子データ収集システムから多量のデータが抽出され、心電図のraw data、心室イベントおよび心不全イベントの心電図に関する評価結果についても重要な判断基準が収集されています。将来的に他のデータセットと統合して拡張されることで、さらなる研究が可能となるでしょう。このような影響力のある研究に関与できることを嬉しく思います。
青沼先生 HINODE試験のPrimary resultの報告はESC Heart Failureに採択され、東邦大学の池田隆徳先生のグループによる論文もすでに採択されており、今後さらなる論文の採択が期待されています。
HINODE試験のデータをJHRSに寄贈することで、野田先生をはじめとする研究者による新たな分析が促進され、日本独自の洞察が提供されることを期待しています。三橋武司先生のJID CAD試験や栗田先生のNIPPON Storm試験などからも、日本における突然死の発生率は決して低くないことが明らかになっています5,6)。ICD植込みのガイドラインが欧米よりも控えめである現状を踏まえ、新しいガイドラインを推進するためにもHINODE試験の成果が活かされることが重要です。
心不全専門医も心不全患者の心臓突然死による死亡率の高さを実感しており、日本心不全学会も多くのデータを収集しています。HINODE試験のデータは不整脈専門医のみならず、心不全や虚血性心疾患の専門医にも共有されるべき重要なものです。日本における虚血性心疾患による突然死は多くないという一般的な認識に疑問を呈した本データが学会を通じて共有されることが重要です。学会間でのセッションを通じて、虚血性心疾患や心不全の専門医にICDやCRT-Dの重要性を啓発することが必要と考えます。
栗田先生 NIPPON Storm試験、JID CAD試験、およびHINODE試験の流れは、時代の経過とともに研究が進化してきたことが示されています。NIPPON Storm試験は10年以上前のものであり、HINODE試験からは非常に貴重なデータが得られるとともに、時代の変遷やデバイス設定の変化を考察する機会も提供されています。
HINODE試験の顕著な特徴は心不全専門医が研究者として積極的に参加している点であり、不整脈専門医のみならず、心不全専門医も含めた多職種の協力が得られていることを意味しています。心不全専門医が新たな認識を深めていることは、この分野の知見を広げる上で重要です。日本心不全学会の重要なメンバーが参加していることが本試験の重要性をさらに高めているのであり、これからも日本心不全学会との協力やコラボレーションを進めることは有益だと思われます。
今後とも学会主導で新たな前向きな臨床研究が開始されることが望まれます。野田先生ら若手の研究者が主導することを期待しており、JCDTRを超える新たな研究が生み出されることを願っています。
図2 ボストン・サイエンティフィックによる不整脈領域における臨床試験の歩み
図2 ボストン・サイエンティフィックによる不整脈領域における臨床試験の歩み
 
 
1. Aonuma K, et al. Primary results from the Japanese Heart Failure and Sudden Cardiac Death Prevention Trial (HINODE). ESC Heart Failure 2022.
2. Moss AJ, et al. Prophylactic implantation of a defibrillator in patients with myocardial infarction and reduced ejection fraction. N Engl J Med 2002; 346: 877-83.
3. Tanno K, et al. Are the MADIT II criteria for ICD implantation appropriate for Japanese patients? Circ J. 2005; 69: 19-22.
4. Køber L, et al. Defibrillator Implantation in Patients with Nonischemic Systolic Heart Failure. N Engl J 2016; 375: 1221-30.
5. Kabutoya T, Mitsuhashi et T, et al. Prognosis of Japanese Patients With Coronary Artery Disease Who Underwent Implantable Cardioverter Defibrillator Implantation - The JID-CAD Study. Circ Rep 2021; 3: 69-76.
6. Kondo Y, Kurita T, et al. Comparison of 2-year outcomes between primary and secondary prophylactic use of defibrillators in patients with coronary artery disease: A prospective propensity score-matched analysis from the Nippon Storm Study. Heart Rhythm O2 2021; 2:5-11.
 

販売名:ラティチュード プログラミング システム 3300
承認番号:30100BZX00170000